Matsuosekkei 松尾式設計術

家庭用エアコン1~2台で家中を快適にする松尾式空調システムとは

松尾式空調システムは一般的な家庭用エアコン1~2台で家じゅうの空調を調節し、冬暖かく夏涼しい、快適な環境をつくり出します。家の広さなどに合わせて稼働台数や運用方法が多少異なりますが、基本となるのは「床下エアコン暖房」と「小屋裏エアコン冷房」です。

床下エアコン暖房

通常の壁掛けエアコンですと足元が寒くなりがちですが、床下エアコンは床が温かくなるので、足元からポカポカ。床下を通じて家全体が暖かくなります。

床下エアコン暖房を1台使用して1階床温度が24℃の場合、1階の室温は22℃、2階は20℃に。南向き窓を大きくとっていれば、晴れている日中はたっぷりの日差しが入り、暖房オフでも室内を20℃以上に保つことができます。

小屋裏エアコン冷房

小屋裏に家庭用エアコンを1台設置して小屋裏を冷やし、その冷気をファンの力で各居室に配ります。

小屋裏の室温が24℃だとすると、2階27℃、1階も27℃程度となります。高気密・高断熱で日射遮蔽が完璧に設計されていれば、8月に1カ月間つけっぱなしでも月の冷房費は4,000~5,000円(2019年時点)に収まることがほとんど。

イニシャルコストだけでなくランニングコストもリーズナブルな空調システムです。

家庭用エアコンで全館空調ができる「松尾式設計術」のメリット

松尾式設計術を提唱している松尾設計室のモットーは、「健康で快適な省エネ住宅を経済的に実現する」こと。

全館空調は家じゅうの温度を常に適温に保ち、一年中快適な暮らしを送ることができる設備です。ところが、通常の全館空調システムは専用のダクトをつくるなど工事も大掛かりになり、空調機も専用機を利用することから150万円以上の初期コストがかかります。

松尾式空調システムでは量販店で販売している家庭用エアコンを使用するので、60~80万円程度で全館空調が実現可能。ダクトもほとんど必要ない簡単なつくりで、余計な工事も要りません。

お金をたくさんかけなくても、松尾式設計術なら健康で豊かな暮らしが手に入るのです。

また、家電製品などの設備は半永久的に使えるわけではなく、10年以上経つと必ず修理や交換の時期がやってきます。一般的な家庭用エアコンならばお手入れも交換も簡単です。

「断熱のように交換が効かないものにはしっかり予算をかけておくべきだけれど、設備はできるだけ交換可能な汎用品を使うべきだ」という松尾氏の考えに基づいた、経済的で合理的な設計術です。

「松尾式設計術」に欠かせない気密断熱性能

松尾式空調システムには、注意すべきことが2つあります。1つは、高気密・高断熱の家以外ではうまく機能せず、経済的にも健康的にもよくないということ。もう1つは、正しい運転方法を用いなければ本来の力を発揮できないということです。

床下エアコン暖房の場合、最低でもUA値0.57以下、C値1.0以下くらいの断熱性・気密性が必要になります。隙間だらけの家では正しく機能しません。アイズホームでは分譲住宅においても上記基準値をクリアしています。

また、温風で心配される「乾燥」に関しては、高気密・高断熱に併せて加湿計画をしっかり立てていれば問題なく、乾燥による肌荒れのほか風邪などの感染率も下がります。

一方小屋裏エアコン冷房の場合、ドアを閉めている各居室にムラなく冷房を効かせるために、気密断熱性のほかに見た目だけではわからない設計上の工夫の積み重ねが必要です。

さらに、小屋裏エアコン冷房は「つけっぱなし」が原則。「もったいないから」とときどき冷房をオフにしてしまうと、かえって電気代がかかってしまいます。

きちんとした設計のもと、正しい使い方をすることで、暑さも寒さも感じにくいストレスフリーな「無感」の状態に。一年を通して心地よい室温を保ち、多湿にならないのでダニやカビの発生もほとんどなく、健康的に暮らせます。

築後年数とUA値の比較

住宅は工事費(イニシャルコスト)+住宅の想定利用年数にかかる光熱費(ランニングコスト)で計算し、総費用額(トータルコスト)が長い目で見てもっとも経済的になるように計画するべきです。

築後年数とUA値を比較してみましょう。

現行の省エネ基準の基本であるH28基準(UA値0.87以下)で建てるとイニシャルコストはいちばん安くなりますが、月々の光熱費は高くなるため、ランニングコストの累計額はどんどん増えていきます。それでも約10年間はH28基準の総費用額がもっとも安いです。

次にワンランク上のG1基準(UA値0.57以下)で建てた家の場合、工事費は多少コスト高なものの、光熱費は安くなるため、築年数が約10~30年までの間の総費用額はH28基準よりも少なくなります。

さらに上ランクのG2基準(UA値0.46以下)で建てると、工事費はいちばん高いですが、30年以上住み続けた場合のランニングコストはもっとも安く、総費用額も少なくなることがわかります。

このような計算をしないと、予算に余裕がなくイニシャルコストの30万円を節約して省エネ仕様を下げたために快適さを手放し、しかもその先30年間で270万円もの光熱費を余分に払うことになる、ということもあり得ます。

上記の試算については2019年度の電気料金等を基に試算したものですので、昨今のエネルギー費の高騰から見据えた場合、ランニングコストの負担はより減ってくるといえるでしょう。

アイズホームでは50年後も心地よく暮らせる家づくりをしています。長く暮らすための家ならばなおさら、G2基準以上を採用することで、トータルコストを抑えながら健康的で快適な暮らしを送ることができるのです。